オノマトペカード制作室
オノマトペカードの製作秘話や楽しみ方など
オノマトペカードにまつわるエピソードを綴っています。
是非、読んでみてくださいね!
https://machitoco.hatenablog.jp/
長年、子どもたちの言語・コミュニケーションの発達支援に従事し、自らもダウン症のある子のお母さんである言語聴覚士が考案。
「すいすい」「くんくん」など状態や動きなどを音で表す「オノマトペ」を使った絵カードで、お子さんのことばの発達を促し、親子のコミュニケーションの楽しみを広げます。
オノマトペとは、「ざあざあ」「ごろごろ」など、身の回りの音や声、動きやものの状態などを音で表現したことばのこと。日本語には4000以上の「オノマトペ」表現があると言われています。
よく、「ブーブーが走ってるね」「パクパク食べようね」などと、小さな子どもへの話しかけで使うことも多いのですが、聞き取りやすくマネしやすいこと、意味がイメージしやすいことから、ことばの発達との関連について研究がすすめられています。
お子さんのことばの発達に不安を抱えているパパ・ママへ。「オノマトペ」を使って、親子で楽しく遊びながら、お子さんのことばの世界を広げてみませんか?
長年、子どもたちの言語・コミュニケーションの発達を支援してきた、言語聴覚士の石上志保先生と協力して「オノマトペカード」が誕生しました!
この絵カードの誕生は、制作・発行する「合同会社まちとこ」のスタッフの息子が自閉症スペクトラムと診断され、石上先生の療育指導を受けたことがきっかけでした。
息子の1歳半検診、発語がないことを指摘され、発達相談を受けました。保健師さんから「たくさんことばをかけてあげて」と言われ、名詞カードで物の名前を教えたり、絵本を読み聞かせたり、外を歩いては「〇〇だよ!〇〇がいるね」などと、とにかく一生懸命話しかけました。
ですが、息子の発語は一向に増えず…。
「どうしたらこの子の発語を促せるのか?」「どうやったらこの子に言葉が入るのか?」
どんなに話しかけても反応が薄いわが子に、もはやどう話しかけたらいいのかわからなく途方にくれていました。
そんな時、療育で知ったのが、言語聴覚士の石上志保先生の語りかけです。
「オノマトペカード」の考案者である、石上志保先生。障害児通園施設、地域の福祉センター等での小児、成人期のコミュニケーション支援の経験を経て、現在は都内総合病院の小児科ほか、地域のクリニックで言語聴覚療法に従事しています。ダウン症のある息子さんとの生活経験を生かし、くらしのなかでことばの力を育てる方法について検討を続けています。
先生は、息子が注目している物や興味あるあそびに対して、「オノマトペ」を使って息子に語りかけました。
当時、息子はボールを転がすのが好きで、公園の滑り台で、ひたすら無言でボールを転がすという遊びを繰り返していました。
そんな時、私は「ほら、見て。ボールだね。青色だね。青色のボールが転がってるね」などと話しかけていました。
ですが、石上先生はそういう話しかけはせず、「ころころころ…ころ…ころ…」「ぽんっ!」「ぽーん!」などと、ボールの転がるさま、落ちるさま、跳ねるさまを音にして、息子に語りかけました。
今まで、名詞カードや図鑑、絵本などで、物の名前ばかりを使って語りかけをしていた私にとっては、目からウロコの語りかけでした。
「話し言葉は一瞬で消えていきます。ことばの発達がゆっくり目のお子さんにとっては、頭の中のことばの音像が時間経過とともに薄れてしまうため、はっきりと音を聞き取り、話すことが難しい場合があります。
例えば、「りんご」という単語も、「り・ん・ご」の3つの音があり、最後の「……ご」だけがなんとなく残る感じです。それは、私たち大人がはじめて聞く外国語を聞きとり、正確にマネをするのが難しいのと似ています。
そんな子どもたちにとって、聞き取りやすくマネしやすいのが、「わんわん」「にこにこ」など音の繰り返しや、「ぽとっ」など音そのものを表現したものが多い「オノマトペ」を使った語りかけです。音から意味や様子を想起しやすいという特徴もあるため、お子さんの発語を促すとともに、理解する力も育てることが期待できるのです」(石上先生)
言語聴覚士の石上志保先生
当時、石上先生はフリーイラストで手作りした「オノマトペカード」を指導に使っていましたが、フリーイラストでオノマトペにあう絵を探すのが大変という悩みを聞き、「では、自分たちで作ってしまおう!」ということに。
現場で生まれた効果のある教材を、息子と同じように、ことばの発達に不安を抱えている親子へ届け、お子さんの言葉の世界を広げ、親子のコミュニケーションを楽しんでほしい。そんな思いで、「まちとこ」で初めての製品化を試みました。
「イメージが浮かびやすいというだけでなく、音の繰り返しが多く、マネしやすい「オノマトペ」は、赤ちゃんはもちろん、言葉の発達がゆっくり目のお子さんにとっても、とても聞きやすい言葉です。
また、私たちも日常生活で、人の気持ちや動作の様子などはもちろん、泣き声や物音など音そのもの、手触り、歯ざわり、見た目、味、匂いなどの感覚、人やモノの状態などを表現する時には、無意識に「オノマトペ」を使っていることも多いように思います。そんな「オノマトペ」の特性を最大限に活用し、子どもたちとことばの世界を広げ、親子のコミュニケーションを楽しんでほしいと思います」(石上先生)
では、実際に「オノマトペ」でどんな力が育つと期待できるのでしょうか?
1:言語音を意識する力
同じ「叩く」に関するオノマトペでも、叩くものや強さの違いによって異なる音で表現します。「とんとん」「どんどん」「たんたん」「ぽくぽく」「ぼこぼこ」「どん!」というように。さまざまな場面で「オノマトペ」を聞いたり使ったりしているうちに、自然に言語音の違いを意識するようになることが期待できます。
2:感じる力、考える力
「ポツポツ」「ザーザー」降る……とえいば雨、「ちらちら」「しんしん」「こんこん」降る……といえば雪、というように、同じ空から降ってくるものでも同じ表現は使いません。「どしんどしん」歩かないで「そろそろ」歩く、「ばしゃー」とこぼれた、「ちょろっ」とこぼれたなどの表現では、力の強さや勢い、量の違いを感じたり考えたりすることにもつながります。
3:語彙を増やす力
「オノマトペ」には、「ドキドキする」「イライラする」など、それだけで動詞として使うもののほかに、「じゃぶじゃぶ洗う」「ぎゅっと抱く」など動詞にくっつけて使うものがたくさんあります。また、「きらきら光ってる。キレイだね」「ほっぺがカサカサ、乾燥しちゃったね」など言い換えたり、他のことばと一緒に使ったりすることもよくあります。さまざまな表現に触れることで、最初は「オノマトペ」だけに注目していたお子さんも、合わせて使うことばや表現などに気づき、語彙を広げていけるようになります。
4:コミュニケーションを楽しむ力
動きや様子、感覚を直接的に表現できる「オノマトペ」は、とても楽しいことばです。意識して「オノマトペ」を使うことで、私たち大人も、ことばや表現に敏感になれるかもしれません。感じたことを伝えあい、お互いに分かり合えた時、コミュニケーションがより深まったり、広がったりしたと感じられるのではないでしょうか。感じたままを音にして、新しいオノマトペを作るのも楽しいですよ。
カードの使い方はさまざまです。
絵本のように
カードをハガキファイルに入れ、絵本のように見ます。お子さんと一緒に、ジェスチャーをつけながら声にだして言いましょう。ファイリングすると、車や電車などの移動も持ち歩けて便利です。
カードとして
カードを見ながら一緒にジェスチャーで表現したり、声に出して言ったりします。例えば、ドアに「とんとん(ノックする)」カードを貼っておくなど、イメージしやすい場所で目につくようにしておき、実際の動作に合わせてオノマトペを聞かせます。
カルタ遊びとして
カルタのように数枚ならべ、「なでなで」などオノマトペで指示してカードを取らせます。最初は2枚だけ並べ、慣れてきたら少しずつカードを増やしていきましょう。
絵本のように見る時もカルタの時も、一般的な単語表現を組み合わせてみましょう。
例えば、「えーんえーん(泣く)」カードについて、「泣く」「悲しい」「涙」など、いろんなことばを使って指示したり、カードに描いてある様子から背景を想像して話し合ったり、複数枚のカードを使ってお話を考えたりして遊べます。
ひらがなを覚えるにも便利
裏面は、ひらがな1文字のシンプルな作り。ひらがなを覚えるカードとしても使えます。
Q 障がいのない子にも役に立ちますか?
A もちろんです。障がいがあってもなくても、0歳からでも使えます。
ことばの世界を楽しむ入り口として、コミュニケーションの幅を広げたり、カルタや絵本のようにして楽しんでいただけると思います。2歳児くらいを担当している保育士さんから所望されることが多いです。2歳というと、おしゃべりは上手になってきたけど、まだひらがなは読めない頃。でも、この絵カードなら、ひらがなが読めなくてもカルタの読み手になれるので、子ども同士だけでカルタ遊びを楽しめるようです。
Q 子どもの関心がなかなか向かない時は?
A 無理強いしないことです。大切なのは、カードを使ってことばを教えることではなく、親子が楽しいコミュニケーションをとることです。
大切なのは、親子の楽しいコミュニケーションが目的であって、この絵カードを使うことが目的ではありません。この絵カードをきっかけにオノマトペを知り、日常的にオノマトペを使って、コミュニケーションの幅が広まってくれればうれしいです。絵カードをばらまいて遊ぶだけだって良いのです。気をつけてほしいのは、「復唱させねば!」と親が必死になったり、勉強スタイルになったりしてしまうことです。そうなったら、子どもは楽しさを感じられないはずです。
Q 療育施設などで使う場合の注意点は?
A 好きに使ってもらってOK。ジェスチャーがあるとよりマネしやすくなります。
注意点は特にありませんので、好きに使ってもらって良いと思います。一つコツがあるとすれば、ジェスチャーをつけた方が、より子どもがマネしやすくなるということです。また、無理に発語を促したり、マネさせたり強要しないことです。
※お子さんの興味や関心などには個人差があります。この絵カードは、お子さんとのコミュニケーションを楽しんでもらうことを目的としています。